おはようから、おやすみまで、わいざーと申します
これは「転勤=参勤交代説」シリーズの第2回です。
→ 第1回「転勤って、令和の参勤交代?」はこちら
前回の記事では、江戸時代の参勤交代と現代の転勤制度が驚くほど似ていることをお話ししました。
今回はさらに一歩踏み込んで、「その制度によって誰が、どんなコストを負っているのか?」に焦点を当てていきます。
“忠誠”にはコストがかかる
表向きには「人材育成」や「公平な人事ローテーション」と言われる転勤制度。
しかし実際には、社員本人とその家族に多くの“見えない負担”を強いているのが現実です。
たとえばこんなケースがあります。
- 東京で子育てが落ち着いた頃、夫に突然の地方転勤命令
- 子どもの受験や家族の介護があるのに、相談の余地なく単身赴任
- 配偶者は仕事を辞めざるを得ず、世帯年収がダウン
- 離れて暮らすことによる家族関係の希薄化や孤独感
企業が用意する「転勤手当」や「社宅補助」だけでは、精神的・人間関係的コストまでカバーすることはできません。
単身赴任という“現代の人質”
江戸時代の参勤交代では、大名の家族が江戸に住み続けることで、事実上の「人質」となっていました。

現代の転勤も、構造としては似ています。家族を「残す」前提での単身赴任は、まるで本人だけが行き来する参勤交代と重なります。
孤独、家族の不在、不規則な生活……。
実際、単身赴任者のうち約4割が心身の不調を訴えているという調査もあります(※参考文献参照)。
転勤が“キャリア”を奪う瞬間もある
また、忘れてはいけないのが配偶者のキャリア喪失です。
転勤先での就職が困難、職種や給与水準のミスマッチ、ブランクによる再就職への不安。
こうして、家族全体のライフプランやキャリア設計が大きく狂うケースも少なくありません。
これらはすべて、「企業への忠誠心」と引き換えに支払われるコスト。
しかも、そのほとんどが制度的には“黙認”されたままです。
「会社のために仕方ない」はもう古い
もちろん、転勤によって得られる経験や出会いはあるでしょう。
ですがそれは“選べる転勤”であるべきではないでしょうか?
近年では、転勤を希望制にしたり、リモート対応を優先する企業も増えています。
これはまさに、「忠誠のコスト」を見直そうという流れの始まりでもあります。
次回予告:「それでも転勤は必要か?」
次回は最終回として、そもそも転勤という制度は今の時代に本当に必要なのか?を掘り下げていきます。
制度の再設計のヒントや、社員と企業双方にとって持続可能な働き方について、事例や研究も交えながらお届けします。
では、また次の記事でお会いしましょう!
グッモグッナイグッラック!!
信頼性のある出典・研究(裏付け補強)
転勤制度とキャリア形成に関する視点を広げるため、参考記事を2つご紹介します。
転居を伴う転勤をなくし、“選ばれる人”を目指す―制度改革がキャリア意識を変える(DODAエージェントサービス)
転居を伴わない転勤制度の改革が、社員一人ひとりのキャリア意識にどのような変化をもたらすかを紹介しています。
転勤族の夫との結婚を機に営業からエンジニアに転身「会社員としてキャリアを築けることにホッとしています」(Woman type)
転勤族との結婚をきっかけにキャリアチェンジを選択した女性の実体験から、転勤が与えるライフプランへの影響を考えます。
関連記事(シリーズまとめ)
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